仮面夫婦を望んだ冷徹な若社長は妻にだけ惚けるような愛を注ぐ。【逃亡不可避な溺愛シリーズ1】
第2章 同棲生活、始まります
「ここが芽惟さんの部屋です。俺の部屋は、あっち」
「……あ、はい」

 あれから数ヶ月後。芽惟は高級マンションの一室にいた。

 白を基調とした美しい部屋には、ある程度の家具が置かれている。それらはすべて高級品であり、到底今までの芽惟が手にできるようなものじゃない。

「一応寝室は一緒にしていますが、俺は普段私室で寝るので」
「あ、そうですよね」

 唖然としすぎて、淡々とした言葉しか返せない。

 でも、そう思うのもある意味当然だ。だって、芽惟が敦也のプロポーズを受け入れてから、全てがとんとん拍子に進んでいるのだから。

(かといって、結婚まで同棲する意味って、ある?)

 敦也曰く、いろいろとややこしいことになりそうだから……ということだったが、多分それはメディア関連のことだろう。

 芸能人でもないのに、と思う気持ちはある。でも、敦也は今をときめく若手社長、しかもイケメンなのだ。その妻となる女性にメディアが興味津々になるのも分かる……かも、しれない。

(うん、これはある意味防犯的な意味を含んでいるんだわ。……同棲と言うか、同居、よね)

 このマンションは管理人室もあるし、部外者は立ち入り出来ないようになっている。あと、警備員も常時配置されているそうだ。

 鍵はオートロックとなっており、部屋自体の防犯面も申し分ない。……正直、芽惟からすれば場違い感が否めない場所。

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