仮面夫婦を望んだ冷徹な若社長は妻にだけ惚けるような愛を注ぐ。【逃亡不可避な溺愛シリーズ1】
 その後、コンビニでパスタを二つ購入し、芽惟はマンションに戻ってきた。

 コンビニの袋に入ったパスタは、温めてもらったこともあり、温かい。マンションで温めてもよかったのだが、どうせすぐに食べるだろう。そう、思ったのだ。

 カードキーで鍵を開けて、芽惟は扉を開ける。

「ただいま戻りました」

 端的に声をかけて、靴を脱ぐ。そうしていれば、リビングのほうから敦也が顔を出した。

「あぁ、おかえりなさい」

 彼がそれだけ声をかけて、また奥に引っ込んでいく。瞬間、芽惟は目を見開いた。

(……それだけを言うために、こちらに顔を出したの?)

 そう思ったら、なんだか胸がどきどきとする。

 敦也は冷徹な若社長とまで呼ばれているのだ。そんなことをするわけがないと思うのに、今の態度を見るにそうとしか思えない。

 自然と緩む口元を引き締めて、芽惟はリビングに足を向けた。

 リビングはとても広い。対面のキッチンと、ダイニングテーブル。椅子は二つしかないが、スペースからして四人分の椅子くらいは置けるだろうか。

 そして、巨大なテレビと少し離れた場所にあるソファー。寛ぐにはぴったりのスペースだ。

< 31 / 49 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop