仮面夫婦を望んだ冷徹な若社長は妻にだけ惚けるような愛を注ぐ。【逃亡不可避な溺愛シリーズ1】
芽惟には、ろくに休日がない。というか、頑なに休日を作ろうとしない人間であった。
休日があれば、余計なことを考えてしまう。それに、休んでいる暇があるのならば働いていたかった。企業が大変なときに、自分が休むなんて考えられない。
しかし、そんな生活はさすがに見過ごせないと言ったのが――芽惟の父である正史だった。
彼は半ば無理やり芽惟に休日を作った。それが……今日。
「……あっ、芽惟! こっちこっち!」
その日、芽惟は近くにあるカフェに来ていた。店内はひんやりとしており、心地いい。
秋にしては暑いこの日。芽惟は高校時代の友人と久々に会うことを選んだ。
「ごめんね、遅れて」
「いいのよ。……芽惟が大変なのは、嫌というほど知っているしね」
彼女――新宮 麗美《れみ》はそう言って笑った。
その際に、彼女のきれいな茶色の髪が揺れる。その姿をぼうっと見つめていたものの、芽惟はハッとしてメニュー表に視線を落とした。
「ところで、ここのところどう? なんとかなりそう?」
「……あー、それに関してはまた後で」
麗美の問いかけを軽く躱して、芽惟は店員を呼んでアイスカフェラテとチーズケーキを注文する。
店員が立ち去ったのを見て、芽惟はお冷に口をつけた。
休日があれば、余計なことを考えてしまう。それに、休んでいる暇があるのならば働いていたかった。企業が大変なときに、自分が休むなんて考えられない。
しかし、そんな生活はさすがに見過ごせないと言ったのが――芽惟の父である正史だった。
彼は半ば無理やり芽惟に休日を作った。それが……今日。
「……あっ、芽惟! こっちこっち!」
その日、芽惟は近くにあるカフェに来ていた。店内はひんやりとしており、心地いい。
秋にしては暑いこの日。芽惟は高校時代の友人と久々に会うことを選んだ。
「ごめんね、遅れて」
「いいのよ。……芽惟が大変なのは、嫌というほど知っているしね」
彼女――新宮 麗美《れみ》はそう言って笑った。
その際に、彼女のきれいな茶色の髪が揺れる。その姿をぼうっと見つめていたものの、芽惟はハッとしてメニュー表に視線を落とした。
「ところで、ここのところどう? なんとかなりそう?」
「……あー、それに関してはまた後で」
麗美の問いかけを軽く躱して、芽惟は店員を呼んでアイスカフェラテとチーズケーキを注文する。
店員が立ち去ったのを見て、芽惟はお冷に口をつけた。