淡い秘め事
気になる存在 妹side
夜が深くなる。
しんと静まり返った部屋の中。
窓からは控えめな夜の灯りが見えた。
帰りを待つ、この時間が好き。
ふたりで寝ているベットに一人でいると、やけに広く無機質に感じる。
そろそろ帰ってきてもいい頃なのに…
もしかして何かあった…?
心配しかけると、玄関の鍵が開く音がした。
毎回と言ってもいいほど、このタイミングで帰ってくる。
私の思考が読まれているみたい。
起きて待っていたことを知られたくないから、鍵を開ける音がした瞬間、布団に顔をうずめる。
「ただいまー…」
お酒とタバコ、女の人の香水が混ざったような香りがした。
いつもの匂いだ。
お兄ちゃんは帰ってくると、私の頭を優しく撫でる。
私を撫でた手には、微かにお兄ちゃんの香水の匂いが残っていた。
私を優しく、ふわふわと撫でると、お兄ちゃんはシャワーを浴びに浴室に向かう。
ざーっという水しぶきの音を聞きながら、私はいつの間にか眠りに落ちてしまった。
朝は1番嫌いな時間。
薄っすら目を開けると、隣でお兄ちゃんが気持ちよさそうに寝ていた。
羨ましく思いながらも、制服を着て学校に行く用意をする。
私が起きて、ごそごそしているとお兄ちゃんが薄目を開けてこっちを見ていた。
「もう学校行くの?」
「『もう』って…今は朝の7時だよ」
毎朝、お兄ちゃんはこんな感じだ。
でも、夜仕事をしているから仕方ない。
一言交わして再び寝てしまったお兄ちゃんを起こさないように、小声で「行ってきます」と言って家を出た。
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