淡い秘め事

※※※


今日の夜はお兄ちゃんと一緒に過ごせる日だ。
夜に一緒に過ごせるのは久しぶりだったから、夕飯は何を作ろうか、とても悩む。
悩んだ結果、お兄ちゃんが大好きな唐揚げを作ることにした。


週に一度過ごせるお兄ちゃんとの時間は、私にとって大切な日。

私が学校から帰ってくると、お兄ちゃんはゲームをしていた。
今日は授業もなかったみたい。


「俺も夕飯作るの手伝うよ」

お兄ちゃんからの提案は嬉しかったけど、たまにしかない休みだから、ゆっくり過ごしてほしい。

「今日は一人で作りたいから、お兄ちゃんはあっち行ってて!」
素直になれない私は、ぶっきらぼうにそう言った。

「なんだよー反抗期かー?」
お兄ちゃんはブツブツ言いながら寝室に戻って行った。





夕飯の唐揚げは大成功。
お兄ちゃんはとても喜んでくれた。
夕飯を食べたら、すぐにお風呂に入る。
お兄ちゃんは長風呂が好きで、お風呂の中で本を読む。
お風呂から出てくるのが遅いから、私はその間、勉強をして待っていた。



「おまたせ」

1時間ほど経ってから、お兄ちゃんは顔を真っ赤にしてお風呂から出てきた。
「あちー」と言いながら私が寝転んでいるベットに入ってくる。
今日のお兄ちゃんは、石鹸とシャンプーと、香水を付けていないそのままのお兄ちゃんの匂いがした。




お兄ちゃんと一緒に動画を見たりアニメを見ていると、あっという間に真夜中だ。


「休みの日は時間が過ぎるのが早いな」

明日から、またお兄ちゃんは忙しくて、こんな風に同じ時間を過ごせないんだ、と思うと寂しくなる。

「なに?寂しくなっちゃった?」

思っていたことが顔に出てしまっていたのか、お兄ちゃんは、からかうように私の顔を覗き込む。

「寂しく…ないもん」
私がそう言うと、お兄ちゃんは私の手をぎゅっと握って、頭を撫でた。
心臓の音がドクドクうるさい。

「もう、子ども扱いしないでっ」

「ごめんごめん。寂しそうな顔するから」

お兄ちゃんに手を握ってもらって
頭を撫でてもらって
本当は嬉しかった。
でも、素直になれない。

お兄ちゃんと一緒にいると、ドキドキしてしまう。
お兄ちゃんと一緒にいると、離れたくなくなってしまう。
お兄ちゃんと一緒にいると、お兄ちゃんを誰にも取られたくないと思ってしまう。





最近の私は、なにか変だ。
< 3 / 6 >

この作品をシェア

pagetop