冷たいアイツの食べ方 (短)
メイドさんになるために
「お金が、ない!」
広げたのは、がま口サイフ。
大きなサイフのお口は、諭吉でもなんでも入りそうなものなのに……
入れるお金が、全くない。
財布からグルル……とお腹の鳴る音が聞こえてきそうだ。
グルル――
あ、今のは私。
「サイフだって私だって、お腹空くよね。この夏の暑い日に、飲み物さえ無いのは、命の危機を感じる……」
現在、8月31日。
数日の登校日を終え、いよいよ明日は新学期。
「あ〜!どうしようかなぁ」
一人分の布団に横になり、うなりながら目を閉じる。
制服の準備OK、筆記用具の準備OK。もう明日を待つだけだ。
と思っていたけれど。
翌日の始業式。
私が来ていたのは――
「メイドの応募を見てやって来ました。夏野(なつの)冷愛(れあ)です」
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