冷たいアイツの食べ方 (短)
「あ、髪が……」
鳥に髪をつつかれた事で、冬田のゴムが外れ、黒髪がサラリとなびく。その衝撃で、丸すぎるメガネが、冬田の顔からポロリと外れる。
カシャン
メガネが床に落ちた。
その時――
俺の中の、何かも落ちた気がした。
「あ、坊っちゃま。失礼しました。今、身なりを整えて参ります」
浅くお辞儀をして、退出するためドアに近づく冬田。指の先まで硬そうなサイボーグに、なぜだか俺は、手を伸ばした。
「待て、冬田」
だけど、触れた指は、想像と全く違って。年相応の、柔らかい肌触りだった。
「……坊っちゃま?」
今まで触れたことのなかった俺たちの距離が、訳分からない速さで一気に縮まる。
その事実に、冬田は少し動揺しているらしかった。俺と繋がっている手を見た時、目が僅かに揺れた。
といっても鉄仮面はそのままで、動揺の「ど」の字も、俺に悟らせないが。