「推しカプを拝みたいだけ」で王子の婚約者選抜試験に参加したのに、気がつけば王子の子を妊娠してました
プロローグ
「んん……?」
その日の朝のこと。
目覚めた瞬間、リーゼは3つの違和感を覚えた。
まず1つ目は、何となく見える世界が違うこと。
何故『何となく』という表現を使ったのかというと、リーゼの視力は非常に悪く、眼鏡が無いとほとんど何も見えないから。
とは言え、見える色で「ここは庭」「ここは部屋」と、判別くらいはできる。
だからリーゼは、今いる場所が自分の部屋ではないことは、すぐに分かったのだ。
手を伸ばせばすぐに届くはずの、リーゼお気に入りの恋愛小説(ちょっぴりエッチ)がぎっしり詰め込まれた本棚がなかったことも、自分の城ではないことの確かな根拠となった。
では、一体ここはどこなのか?
リーゼは、そのヒントを探るために何気なく見渡して、2つ目の違和感に気づいた。
(どうして私、スッポンポンなの!?)
リーゼは普段、眠る時はお気に入りの小説に出てくるマスコットキャラクターを模した、自ら手作りした着ぐるみパジャマを着ている。
これは、眠っている時も推しキャラに包まれたいという、リーゼならではのこだわりから来ており、裁縫が得意なメイドに泣きついてまで、どうにか数ヶ月かけて完成させた代物なのだ。
それを着ないで眠るなんて、まずリーゼにとってはあり得ない出来事だった。
(一体、どうして……)
さらにヒントを探そうと、身体を動かそうとして気づいてしまった3つ目の違和感というのが、味わったことのない下半身の痛みだった。
よくよく見ると、シーツに赤い血のようなものがついていたので、リーゼは一瞬月のものかとも考えたが、その時とはお腹の感覚が違う気がした。
(とにかくまずは、眼鏡眼鏡……)
リーゼは、手でペタペタと触りながら眼鏡を探した。
まず、枕らしきものに触れた。いつもであれば、枕元に置いて眠るので、その付近にあるのではないかとリーゼは手を伸ばした。しかし、見つからない。
もしかすると、寝相が悪すぎてどこかに吹っ飛ばしてしまったのではないか、と慎重にベッドの上を四つん這いで移動しながら、再びペタペタと可能な限り触りまくった。
ふと、急に触感が変わった場所があった。
今までは布のしっとりさらりとした触感ばかりだったのに、急に弾力がある肉のようなものにリーゼは触れてしまった。
(な、何……これ……)
肌色なのは分かったが、その正体がリーゼにはまだ分からなかった。
(もう少し触れば、分かるかな?)
リーゼが手を動かすと、急に何者かに手首を掴まれた。
「ひゃっ!?」
突然の出来事に、心臓が飛び出るほどリーゼは驚いた。
「だ、誰ですか……?」
恐る恐るリーゼは尋ねた。そして返ってきた声を聞いて、リーゼはますます驚いた。
「俺のことが分からないとはいい度胸だな」
「そ、そのお声……まさか……」
「あ、そうそう、お前のこれは俺が預かってたぞ」
その声の主は、リーゼに「はい」と言いながら眼鏡を渡した。
リーゼは、恐る恐るそれをかけた。
(どうか、自分の予想が外れてください)
そう願いながら。
だが、その願いは瞬時に木っ端微塵にされた。
「ひい!!お、王子殿下……!?」
「おはよう、リーゼ。気分はどうだ?」
リーゼが目にしたのは、この国の第1王子、エドヴィンのスッポンポンのお姿だった。
「きゃあ!!」
リーゼは、急いで眼鏡を外し、さらに目を手で覆い隠した。
「な、ななな何で王子殿下が……」
「何でも何も、ここは俺の部屋だぞ」
「……えっ!?」
「昨日のこと、覚えていないのか?」
「き、昨日とは……」
エドヴィンは、慌てているリーゼに近づき、耳元でこう囁いた。
「俺と結ばれたこと」
「へっ!?」
リーゼは何が何だか分からなかった。
何故なら、リーゼにとってはエドヴィンは決して恋愛対象にはなり得ない存在だったから。
「どうだ、嬉しいだろ?」
「何故です?」
「何故って……俺の婚約者になりたくて、婚約者選抜試験を受けにきたんだろう?」
そう。リーゼの記憶は確かにそこまでは残っている。
昨日までの1週間、王子の婚約者を選ぶ試験のために、城に滞在していたこと。
そして、最終日の昨日の夜には、参加者と関係者だけしか参加できない舞踏会があったこと。
そこまでは、思い出せていた。
そして、何故この選抜試験を受けにきたのかの動機も、しっかり。
「お前は、俺の期待以上の結果を残してくれた。お前以外、俺の妻は考えられない」
そう言って、エドヴィンはリーゼに口づけをしようと、唇を近づけたが、それは失敗に終わった。
何故なら、リーゼが
「ちがああああああうううう!!」
と急に頭を抱えてからシーツに顔を突っ伏してしまったから。
「私が望んでたのは、王子とアレクサンドラ様のカップルがイチャイチャする場面だったのにー!!!!」
「な、何だって!?」
「どうしてよりによって、私が推しカプの邪魔しなきゃいけないのー!違う違う!そうじゃないー!!!」
リーゼが、何故王子と結婚する気が一切ないどころか、他の女と結婚することを望んでいるのか。
話は約1ヶ月程前に遡る……。
その日の朝のこと。
目覚めた瞬間、リーゼは3つの違和感を覚えた。
まず1つ目は、何となく見える世界が違うこと。
何故『何となく』という表現を使ったのかというと、リーゼの視力は非常に悪く、眼鏡が無いとほとんど何も見えないから。
とは言え、見える色で「ここは庭」「ここは部屋」と、判別くらいはできる。
だからリーゼは、今いる場所が自分の部屋ではないことは、すぐに分かったのだ。
手を伸ばせばすぐに届くはずの、リーゼお気に入りの恋愛小説(ちょっぴりエッチ)がぎっしり詰め込まれた本棚がなかったことも、自分の城ではないことの確かな根拠となった。
では、一体ここはどこなのか?
リーゼは、そのヒントを探るために何気なく見渡して、2つ目の違和感に気づいた。
(どうして私、スッポンポンなの!?)
リーゼは普段、眠る時はお気に入りの小説に出てくるマスコットキャラクターを模した、自ら手作りした着ぐるみパジャマを着ている。
これは、眠っている時も推しキャラに包まれたいという、リーゼならではのこだわりから来ており、裁縫が得意なメイドに泣きついてまで、どうにか数ヶ月かけて完成させた代物なのだ。
それを着ないで眠るなんて、まずリーゼにとってはあり得ない出来事だった。
(一体、どうして……)
さらにヒントを探そうと、身体を動かそうとして気づいてしまった3つ目の違和感というのが、味わったことのない下半身の痛みだった。
よくよく見ると、シーツに赤い血のようなものがついていたので、リーゼは一瞬月のものかとも考えたが、その時とはお腹の感覚が違う気がした。
(とにかくまずは、眼鏡眼鏡……)
リーゼは、手でペタペタと触りながら眼鏡を探した。
まず、枕らしきものに触れた。いつもであれば、枕元に置いて眠るので、その付近にあるのではないかとリーゼは手を伸ばした。しかし、見つからない。
もしかすると、寝相が悪すぎてどこかに吹っ飛ばしてしまったのではないか、と慎重にベッドの上を四つん這いで移動しながら、再びペタペタと可能な限り触りまくった。
ふと、急に触感が変わった場所があった。
今までは布のしっとりさらりとした触感ばかりだったのに、急に弾力がある肉のようなものにリーゼは触れてしまった。
(な、何……これ……)
肌色なのは分かったが、その正体がリーゼにはまだ分からなかった。
(もう少し触れば、分かるかな?)
リーゼが手を動かすと、急に何者かに手首を掴まれた。
「ひゃっ!?」
突然の出来事に、心臓が飛び出るほどリーゼは驚いた。
「だ、誰ですか……?」
恐る恐るリーゼは尋ねた。そして返ってきた声を聞いて、リーゼはますます驚いた。
「俺のことが分からないとはいい度胸だな」
「そ、そのお声……まさか……」
「あ、そうそう、お前のこれは俺が預かってたぞ」
その声の主は、リーゼに「はい」と言いながら眼鏡を渡した。
リーゼは、恐る恐るそれをかけた。
(どうか、自分の予想が外れてください)
そう願いながら。
だが、その願いは瞬時に木っ端微塵にされた。
「ひい!!お、王子殿下……!?」
「おはよう、リーゼ。気分はどうだ?」
リーゼが目にしたのは、この国の第1王子、エドヴィンのスッポンポンのお姿だった。
「きゃあ!!」
リーゼは、急いで眼鏡を外し、さらに目を手で覆い隠した。
「な、ななな何で王子殿下が……」
「何でも何も、ここは俺の部屋だぞ」
「……えっ!?」
「昨日のこと、覚えていないのか?」
「き、昨日とは……」
エドヴィンは、慌てているリーゼに近づき、耳元でこう囁いた。
「俺と結ばれたこと」
「へっ!?」
リーゼは何が何だか分からなかった。
何故なら、リーゼにとってはエドヴィンは決して恋愛対象にはなり得ない存在だったから。
「どうだ、嬉しいだろ?」
「何故です?」
「何故って……俺の婚約者になりたくて、婚約者選抜試験を受けにきたんだろう?」
そう。リーゼの記憶は確かにそこまでは残っている。
昨日までの1週間、王子の婚約者を選ぶ試験のために、城に滞在していたこと。
そして、最終日の昨日の夜には、参加者と関係者だけしか参加できない舞踏会があったこと。
そこまでは、思い出せていた。
そして、何故この選抜試験を受けにきたのかの動機も、しっかり。
「お前は、俺の期待以上の結果を残してくれた。お前以外、俺の妻は考えられない」
そう言って、エドヴィンはリーゼに口づけをしようと、唇を近づけたが、それは失敗に終わった。
何故なら、リーゼが
「ちがああああああうううう!!」
と急に頭を抱えてからシーツに顔を突っ伏してしまったから。
「私が望んでたのは、王子とアレクサンドラ様のカップルがイチャイチャする場面だったのにー!!!!」
「な、何だって!?」
「どうしてよりによって、私が推しカプの邪魔しなきゃいけないのー!違う違う!そうじゃないー!!!」
リーゼが、何故王子と結婚する気が一切ないどころか、他の女と結婚することを望んでいるのか。
話は約1ヶ月程前に遡る……。
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