「推しカプを拝みたいだけ」で王子の婚約者選抜試験に参加したのに、気がつけば王子の子を妊娠してました
 面接でリーゼとアレクサンドラ、2人が残ってしまった、という設定にする。
 そして「仕方がなく、2人の適性を見極めるために長い期間を設けなくてはならなかった」という事にして、実際に王妃になるための教育を受けてもらう。
 最後に舞踏会を開き、大勢の貴族たちを呼ぶ。
 その中で宣言するのだ。
 婚約者をリーゼにする、と。
 後は、既成事実をいろいろと作ってしまえば、リーゼの逃げ道はなくなるだろう、と。

「既成事実とは一体どういう……」
「あなたの頭は5歳児ですか。そんな立派な体をしているのに」

 アレクサンドラは、わかりやすくため息をついてから

「体の交わりに決まっているでしょう」

 と、高貴すぎる表情と声に見合わない言葉をずばっと、エドヴィン王子に向かって言い放った。

「ま、まじ……!?」」
「あら、そんな単語1つでそんなに真っ赤になって……お可愛いこと」
「そ、それはまだ早いだろう……彼女が嫌がるようなことは……」
「そんなこと言ってる場合ですの?」

 アレクサンドラは、持っていた扇子を閉じて、エドヴィン王子の顎をそれでつついた。

「あと1週間しかないんですのよ。1週間。それが終われば、あなたは永遠にリーゼ様を失う」
「そ、それは…………」

 大袈裟だろうと言いたかったエドヴィン王子だったが、むしろ正しいことのようにすら思えた。

「体で繋がりたいと思わせるくらい、あなたがリーゼ様をメロメロにしてから、一気に勝負かけなさいよ、それでも男ですか。そこについてるものは飾りですか?」
「…………彼女に、君のこういうところを見せたいよ」
「あら、あなたにしか見せないから、価値があるんじゃありませんこと」

 エドヴィン王子は、毎度のごとくアレクサンドラに言い負かされる自分が益々嫌になりつつも、リーゼを手に入れたいという欲望と天秤にかけ、結果後者を取った。

「…………俺はどうすればいい」

 エドヴィンの覚悟を聞いたアレクサンドラは、見たこともないような楽しそうな微笑みを浮かべた。
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