「推しカプを拝みたいだけ」で王子の婚約者選抜試験に参加したのに、気がつけば王子の子を妊娠してました
「む、無理とはどういうことだ!?」
「生理的に無理という話かしら。まあ分からなくはないけれど、私は無理ですから」

 そ、そうだったんだ……と、アレクサンドラからの告白にニーナは驚きを隠せなかった。

「ちなみにうちのお嬢様ですが……平気で殿下とアレクサンドラ様のキスやら、ベッドシーンやらを妄想して、なんだったらそれを紙に文字として書き留めてますが」

 言葉にしてみたものの、心底うちのお嬢様はキモいなと、ニーナは思ってしまった。
 だが、ニーナ以上に衝撃を受けていたのはやはり、当事者2人。

「「こいつとキスどころかベッドなんて死んでも嫌だ、むしろ死ぬ」」

 やはり、息がぴったり合っている。
 その理由は、深入りしないようにしよう、と、ニーナは生まれ持った危機管理能力で決意した。

「それでは一体、どうすればいいのだ……」

 イケメン台無しな涙目で、頭を抱えるエドヴィン王子。

「だから言ったじゃない。既成事実を作ってしまえばいいと」

 そんなエドヴィン王子を見下ろしつつ、少し楽しそうな表情を浮かべるアレクサンドラ。

「あの、既成事実とは……」

 そんな2人を交互に見ながら、将来の不労所得との引き換えの割に、これから自分に降りかかる仕事は割に合わなさすぎるのではないか、と逃げ出したくなったニーナだったが、アレクサンドラは狙った獲物を逃さすような愚かなことはしてくれなかった。

「だから、あなたに協力してほしいのよ」
「は、はあ……?」

 とりあえず、今の雇い主のブラウニー家の機嫌を損ねたくないなーとニーナは本気で思いながら、次の言葉を待機した。
 そしてやはり、自分の予想は当たっていたのだと、ニーナは自分の察しの良さを実感した。

「エドヴィン王子とリーゼ様で一夜を過ごさせて、子供を作って強制的に王の子の母にしてしまうのよ」
< 32 / 164 >

この作品をシェア

pagetop