「推しカプを拝みたいだけ」で王子の婚約者選抜試験に参加したのに、気がつけば王子の子を妊娠してました
 そんなこんなで。
 早速婚約者試験延長戦の1つとして定められた、ディナーのマナー試験の時間となった。
 ……実際のところは、エドヴィン王子とアレクサンドラとのただの夕食会なのだが。
 そんなことを言おうものなら

「え!?私はニーナと一緒に使用人部屋で大丈夫ですわ!どうぞお二人で楽しい時間を!あ、でもやっぱり柱の隅でこっそりお二人のお食事風景を覗きたい気も……」

 などと言い出すことは、明白だったので、試験という名目にして無理やり城のダイニングにリーゼを引っ張り出したのも、アレクサンドラが提案した作戦だった。
 それを聞いた時、ニーナは

「よく、たった半日だけあれと過ごして見抜きましたね……」

 と、ついポロリと言ってしまった。

「私も、似たようなことを考えたことがありますので」

 アレクサンドラが、聞こえるか聞こえないかの小声でそんなことをボソリと呟いたのは、あえてニーナは聞かないことにした。

 さて。ニーナに無理やりディナー用にドレスアップさせられ、窮屈な気持ちにさせられていたリーゼだったが……。

「う、麗しすぎる……!」

 細長いテーブルの中央には、城の庭に咲いていた季節の花々が飾られた豪華な花瓶やみずみずしい果物が、単なる引き立て役にしかならない程の美貌を、惜しげもなくドレス姿で披露しているアレクサンドラを見て、鼻血を噴きそうになった。

「リーゼ様、どうぞ私の目の前にお座りになって」

 アレクサンドラの誘いに、リーゼは必死で鼻血をこらえながら

「いえ、私はここで」

 と、1番の下座にあっさり腰掛けた。
 もちろん、アレクサンドラがそんなことを許すはずはなかったので、白魚のような手を2回ほどたたき、城のメイドを召喚し、あっさりとリーゼを捕獲&自分の前に無理やり座らせたのだった。
< 38 / 164 >

この作品をシェア

pagetop