「推しカプを拝みたいだけ」で王子の婚約者選抜試験に参加したのに、気がつけば王子の子を妊娠してました
「確かに、正直、かなり……戸惑いはしたが……」

 相当戸惑ったんだろうな、と、エドヴィン王子の口調からニーナは察した。

「だ、だが。俺は別に、元から顔だけでリーゼ嬢を好きになったわけではなく……」
「と、言いますと?」
「それ……は……」

 エドヴィン王子は、ちらとアレクサンドラに視線を送ってから、再びニーナに視線を戻した。

「俺の周りは…………自己主張が少し激しい女性が多くて……」

 ニーナは、何も反応しなかった。
 ここで同意をすればアレクサンドラを敵に回すことは確実だったから。
 実際、エドヴィン王子がそう言った時、アレクサンドラの目が光った。

「貴族の女というのは、皆目がギラギラしていて、俺は正直話すのが大変で……というより苦手で……」
「なるほど?」

 薄々、ニーナは気づいてはいた。
 エドヴィン王子は、立場上頑張って人前で話す努力はしているのだが、ところどころで苦しそうな表情をしている。
 もしかしたら、他人と話すのが苦手なタイプなのではないか、と思った。
 ニーナの周囲の人間達には、どちらかというと「話したい話したい」としっぽを振って喜ぶ犬のようなヒト科の生物しかいないから、見たことはなかった。
 だが、真逆の人間がいるということは、知識では知っていた。

「だから……リーゼ嬢と話していると、落ち着くんだ」

 そこから聞かされたのは、エドヴィン王子がリーゼを本当に好きになった、過去の出来事だった。
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