「推しカプを拝みたいだけ」で王子の婚約者選抜試験に参加したのに、気がつけば王子の子を妊娠してました
 国の王家だけでなく、貴族にとって人気の保養地がある。
 それは、温泉が湧き出ているガーデン・アクアという町。
 病気や怪我に効くだけでなく、心の疲労にもきくということで、多くの貴族たちに愛されていた。
 エドヴィン王子は15歳になったばかりの頃、この町の視察に訪れていた。
 多くの家族連れやカップルが仲良さそうに街並みを歩いているを見るたびに、エドヴィン王子はリーゼと自分が並んで歩く姿を妄想した。
 しかも、この街にいる場合、ただ並んで歩くだけじゃない。

(一緒に……温泉に入れたらどんなにいいか……)

 温泉に入るためにあつらえた、特別な服に身を包み、共に温泉に入るという文化がある。
 そして、カップルで温泉に入れたら、未来永劫仲良しでいられるというジンクスがあったのだ。
 特別な服は、そこまで露出は高くはないものの、水に入れば体にぴったりとくっついてしまう。
 普段ドレスですっぽり覆われた思い人の体のラインがわかってしまうという、ドキドキシチュエーションが生まれてしまうのも、まさにこの温泉デートならではだったりする。
 そのため、とても片想い中に温泉デートに誘うことは無理。せめて両思いになって、ある程度の関係が進んでからではないと……という暗黙の了解みたいなものが、貴族たちの間で広がっていた。

 エドヴィン王子は、国宝級と言われるイケメンだが、それでもやはり男の子。
 リーゼの温泉デート姿を妄想しては、ドキドキムラムラとしていたりするのだが……。
 まさにそんな時だった。

 エドヴィン王子が、温泉街の中心地にある、待ち合わせスポットとしても人気の噴水前まで侍従たちと歩いていると……見つけてしまったのだ。

(な、なぜこんなところにリーゼ嬢が!?)
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