アラフィフママを溺愛するのは植物男子でした

 本当に困る! 今度から、こういった重要備品は総務を通さずに、こっちで管理できるように部長に取り計らってもらおう!

楠木(くすのき)さん、見本できました?」
「ああーっ、ちょっと待って! 今、トラブルが!」

 タイミング悪く、郡山くんが様子を見にやってきた。
 社内では上司なのに、私は焦るあまりタメ口で言ってしまっていた。
 もう、総務は通していられない。
 私はプリンターのメーカー担当者へ直接連絡し、感光体を持ってきてもらうように頼んだ。しかし、担当者が運悪く外回りで遠方へ出向いていたらしく、持ってきてくれたのはお昼を過ぎてからだった。
 なんとか印刷して郡山くんに渡したが、かなり疲れて自己嫌悪に陥ってしまった。

「ま、まあ、悪いのは総務なんだろう? そう、落ち込むこともないさ」

 と、慰めの言葉をくれたのは、意外にも部長だった。

「そうですよぉ。それに、先方に届けるのは今日の夕方までだったから、全然大丈夫ですよ」

 三島さんが、コーヒーを買ってきて目の前に置いてくれた。
 そうか、私が「お昼までにできる」って、勝手に締切を作っちゃっていたから、こんなに焦ったのか……。
 ヴーっと、スマホのバイブレーションが鳴った。郡山くんからのメッセージだった。

『先ほど、営業と一緒に先方に見本を届けてきました。お疲れ様です!』

 それを見て、ようやくホッとする。

「チーフ、お昼食べてないですよね? 休憩行きましょう!」

 後ろから、三島さんに肩を掴まれた。
 えっ、急に何!?
 
「部長、いいですよね?」
「ああ、いいよ。食堂で何か軽く食べておいで」

 私は、三島さんに背中を押されるように、食堂へ向かった。
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