アラフィフママを溺愛するのは植物男子でした
 いや、無理でしょ!
 一体、誰に相談すれば……。

 あ! 種をくれた女性!
 彼女の花屋は、家と会社の間にある。最初に会った時も夜遅くまで店を開いていたみたいだから、まだやってるはず。スニーカーを持って、相談に行って来よう!

「ちょ、ちょっと待ってて! 30分くらい!」

 私は、慌てて家を飛び出した。

 あの時の裏路地まで急いで来た。
 確か、花屋は十数メートル奥に入ったところ……のはずだったのだが。

「な、ない!?」

 そこは、お店どころか何もなく、壁だった。

「嘘でしょ、場所を間違えた?」

 もう少し奥まで進んでみるが、あるのは飲み屋ばかりで花屋はひとつもなかった。
 あの日、私は確かに花屋へ連れられて、このスニーカーを借りて種をもらった。今思うと、あの女性はどこか不思議な感じのする人だった。夢じゃなかったとすると、あの女性は幽──。

 いやいやいや! そ、そんなわけないでしょ。
 雑念を振り払った。

 しかし、これで相談できる人はいなくなってしまった。
 肩を落として帰宅すると、彼は動けないのに嫌な顔ひとつせず待っていてくれた。
 
「おかえりなさい、結衣子さん」

 それどころか、微笑んでさえくれる。
 ああ、本当にどうしよう。
 とんでもないものを育ててしまった。
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