アラフィフママを溺愛するのは植物男子でした
 週末──。
 郡山くんが、家にやってきた。

「──で?」

 寝室のミノを紹介して一通り説明すると、郡山くんは顔を引きつらせ腕を組み、片足でコツコツ床を叩き苛立ちをあらわにした。

「なんなんですか、これは!!」
「私もそう思うわよー!!」
「あ、あの、落ち着いて……」

 私たちの間で、おろおろするミノ。
 まるで、子どもの前でケンカする夫婦のようになってしまった。

「なんで、もっと早く相談してくれなかったんですか!」
「だって言いづらいでしょ、夫に似た植物なんて生えてきたら──!」
「──え?」

 そこで、郡山くんがフリーズした。

「旦那さんに……似てるんですか?」

 しまった……。
 つい、勢い余って言ってしまった。
 黙っていてもいつかはバレただろうけど、もし本当に郡山くんが私のことを想ってくれているなら、気分のいいものではないよね……?

 だけど私、別に郡山くんに好きだとか、告白されたわけじゃない。
 だから、ミノが夫に似た姿でも問題ないはずよ。

「そ、そうよ。人型植物は、主人の想いに反映して生えてくるみたい。だから、夫に似た姿になったんだわ」

 開き直って言うと、郡山くんは拳を握りしめて震え出した。
 怒ったかと思ったが、黙ったまま突然植木鉢ごとミノを持ち上げた。

「えっ!?」

 何事かと、私もミノも驚いた。

「とにかく、これは僕が一旦預かります! 先輩と同じ寝室にいるなんて、とんでもない!!」

「は? えっ? ちょ、ちょっと……!」

 郡山くんは、ミノを抱えて逃げるように去って行った。

「え、ええーー!?!?」

 一人残された私は茫然と、ただ立ち尽くすしかなかった。
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