神様の花嫁候補になりました!?
第1話 出会い
○広い和室。

ここは明治、大正時代に似た異世界。
金魚や鳥などが擬人化され、暮らしている。
中央に布団に横になって産気づいている女性。
(金魚の擬人化。女性の髪の毛はオレンジ。和金の一家)
その女性の周りには産婆と、手助けにきた近所の女性陣。
みんな和服。

赤ん坊「おぎゃあ! おぎゃあ!」

取り上げられたのは赤毛の女の子。
右肩の上に金魚の形のアザがある。

産婆「このアザは……!」
手伝いにきた女性「この子は特別な子になるわ!」

この世界では生まれつき体にアザ(金魚の場合は、金魚形をしているアザ)のある女子は神様の花嫁候補になると言われている。

☆☆☆

○学校の門の前。

学校の敷地面積は東京ドーム100個分ほど。
木造校舎が奥の方に、手前には木造の門と塀が広がっている。
門の奥にすぐ見えるのは巨大な日本庭園。
日本庭園の真ん中を校舎まで続く白い道がある。

門の前で棒立ちになる主人公の和子(かずこ)。
周囲には和子と同年代、17歳になったばかりの女子生徒たち。
(ウサギや、キツネ、魚など、生き物が擬人化された者たち)
みんな上物の和服を来ている中、和子だけ普段着の地味な金魚柄の和服。
和子は伸ばした赤毛を結い上げている。

生徒A「みてあの子。下品な格好ね」
生徒B「あんな格好で入学式に来るなんて、ちょっとおかしいんじゃない?」
生徒C「あの金魚柄、すっごく変」
生徒たち「くすくすくす」

門が開き生徒が続々と敷地内へ。
和子もおずおずとそれに続く。


☆☆☆

○教室の中。

その教室は広い和室になっている。
体育館ほどの広さがあり、新入生たちが全員座している。
そこに龍の神様である校長先生が現れる(龍の擬人化男性)。
長い白髪。龍の刺繍の入った和服。

校長先生「ようこそ、神花高校(しんかこうこう)へ。ここは選ばれた女性しか入学することのできない、特別な学校です。この学校に入学できたあなたたちは、すでに神様の花嫁候補ということです」

校長の説明にうっとりするようなざわめきが起こる。
和子は仏頂面をしている。

校長先生「この学校ではあなたたちの花婿さんを選び、そして婚姻へと結びつける勉強を行います。自分の花婿さん候補が決まったあとは、家には帰らず、この学校の敷地内にある、神様の邸宅にて過ごすことになります」

和子「(それってある意味監禁でしょう?)」
和子1人に不服そうにしている。

校長先生「誰の花嫁候補となるのかは、占いによって決められます。まずは弱姫(じゃくひめ)さん、いらっしゃいますか?」
弱姫「は、はいっ!」

背が低く、誰よりも細く、青白い顔をした新入生が緊張で顔を赤くして手をあげる。

校長先生「こちらへどうぞ」

弱姫は手招きされて、校長の隣へ。
緊張から何度も自分の和服の裾を踏んでこけそうになっている。
和服の柄はイワシ。

校長先生「これから弱姫さんのお相手候補となる神様を選びます」

校長先生の言葉を合図に他の先生(うねる髪の毛と、吊り上がった目を持つ蛇の擬人化女性)が障子を開ける。
日本庭園が見渡せて、付近にはこぶし大の岩が沢山並んでいる。
校長先生が目を閉じて弱姫の肩に右手を置く。

校長先生「どうか、弱姫さんのお相手をお教えください」

そのとき晴天なのに突然雷が落ちて岩の1つが割れる。
校長先生がその亀裂を確認して微笑む。

校長先生「弱姫さん。あなたが誰の花嫁候補になるのか決まりました」

緊張している弱姫は両手で胸の前で握りしめている。

校長先生「あなたはイワシ神の花嫁候補として頑張っていただきます」

校長先生の言葉に一気に緊張が解けて笑顔になる弱姫。
教室に歓声が湧き上がる。

校長先生「あなたならきっとうまくやれるでしょう。けれど、神様の花嫁候補は1人じゃありません。決して油断しないように……」

☆☆☆

校長先生「次は和子さん。いらっしゃいますか?」

名前を呼ばれた和子が嫌々校長の元へ向かう。
そんな和子を見て校長はなにかを感じ取って眉をピクリと動かすが、なにも言わない。

校長先生「どうか、和子さんのお相手をお教えください」

雷が落ちて一つの岩が割れるのを見ても、和子は無表情を貫く。
校長は石の割れ方を確認して微笑んだ。

校長先生「これは水神様ですね。あなたととても相性がよさそうだ」
和子「……そうは思わないけど」

小声の文句は誰にも聞こえない。
それからもお相手選びが続いたが、水神様の花嫁候補はなぜか和子1人だった。

和子「花嫁候補は2人から3人いるんじゃなかったんですか?」

入学式が終わってしまいそうな雰囲気の中、慌てて手を上げて質問する。

校長先生「たまにはこういうこともあるでしょう」

にこやかな校長に和子は盛大な溜息を吐き出した。

☆☆☆

○水神様の邸宅の前。

学校の門敷地内にすべての神様の邸宅がある。
邸宅を囲んでいる門をくぐれば、そこには豪華な日本家屋。
庭園には大きな池があり、沢山の金魚が泳いでいる。
和子は思わずそこへ駆け寄っていく。

和子「わぁ! キレイ!」

見事に育っている金魚たちに足を止めて見入る。
和子の家系は金魚なので、池の金魚たちがどれだけ大切に育てられているか、見ればわかった。
金魚たちは人影を見ても逃げ出さない。

和子「あんたたち、幸せなんだね」

呟いたとき、足音が近づいてくる。
ふりむくと、背の高い水のように青く、色白な青年が立っている。
年齢は19歳くらいに見える。
その美しさに和子は一瞬ときめいてしまう。

和子(この美しい人は誰だろう。この人が神様?)

ドキドキしているため、青年から一歩後ずさりをして距離を取る。
和子の様子を見て青年は微笑みを浮かべた。

水神様「はじめまして。君が和子さん?」
和子「は、はい」

緊張から声が裏返ってしまう。

水神様「僕は、他の人からは水神様と呼ばれる」

水神様は照れくさそうに頭をかく。
その仕草に和子は大きく目を見開く。

和子(あれ、この人……)
水神様「神様だなんて、大げさでしょう? さ、入ってください」

和子を促して歩き出す。

和子(やっぱりこの人、噂に聞いてた神様と全然違うんだ……)

和子がつてきていないことに気がついて水神様は立ち止まり、振り向く。

水神様「どうしたんですか?」
和子「い、いえ」

和子はとまどいながらもすぐに後をおいかけた。
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