神様の花嫁候補になりました!?
第2話 惹かれる
○水神様の邸宅内。
邸宅内には12畳ほどの和室が10部屋存在している。
水神様「ここはお風呂。ここが台所。それからこっちが……」
広い家屋の案内を終えたあと、今日から和子の部屋になる和室へ案内される。
水神様「ここが和子さんの部屋です。一通り揃えいるつもりですが、なにか足りないものがあったらなんでも言ってください」
和子「はい……」
和子(これからここで暮らすなんて信じられない気分)
☆☆☆
○邸宅の和子の部屋。
和子は1人で畳の上に横になっている。
和服が乱れているが、気にしていない。
和子「なぁんか拍子抜けしちゃった。神様ってもっと傲慢で、嫌なやつだと思ってた」
(回想シーン)
○田園風景。
8歳の和子。
赤い和服を着ている。
友人(水草の擬人化。黒い髪の毛に細い手足を持つ、和子と同年代の男の子。名前は水)と2人で外で遊んでいる。
水「お前、神様の花嫁になるんだってな?」
和子「うん! 生まれたときから決められてることなんだって!」
嬉しそうに飛び跳ねる和子。
自分は特別なのだと、生まれた時から聞いてきた。
17歳になると特別な学校へ入学することも決まっている。
入学後に花嫁修行をするものの、ほとんどの子がそれ以前から頑張っているらしい。
和子ももう少し成長したら家庭内での花嫁修業が始まるが、それも誇らしく感じている。
水「浮かれちゃって、神様っていうのは傲慢で、嫌なヤツなんだぞ?」
和子「えぇ? そうなの?」
水「当たり前だろ! だって、自分を神だなんて思ってるんだからなぁ。オレたちのことなんて、家来としか考えてないって。だから結婚したら、きっと1日中家事と身の回りの世話ばかりさせられるんだぞ!」
(現在)
○邸宅の和子の部屋。
いつの間にか眠っていた和子は飛び起きる。
和子「嫌な夢見ちゃった……」
夢はこの学校へ来るのが嫌だった出来事だった。
友人の水は事あるごとに神様はイジワルだと和子に伝えてきた。
そのため、10歳になってから始まった家庭内での花嫁修業はほとんどさぼってばかりだった。
入学式当日に普段着を着てきたのも、せめてもの抵抗だったのだ。
障子を開けると窓から西日が差している。
ギョッと目を見開く和子。
和子(いつの間にこんなに眠っちゃったの!? もう夕飯の支度の時間じゃない!)
長い廊下を滑るように走って台所へ。
そこでは水神様がお味噌汁を作っている最中だった。
水神様「おや、和子さん。しっかり休憩できましたか?」
にこやかな水神様に青ざめる和子。
和子「すみません! 私がやりますから!」
水神様「これくらい、僕でもできることですよ」
和子「そ、それじゃお風呂の準備をっ」
水神様「それも、もう終わっています」
和子「そんな……!」
和子(嫌々とはいえここまで来たのに。入学当日なのに、やらかしてしまった……!!)
水神様「さ、食べましょうか」
ポンッと頭を撫でられて、心臓がドキッと撥ねる。
和子(初めて見たときもそうだったけど、なんだろうこの胸のドキドキ感……)
☆☆☆
○邸宅の一室。
ふたりは向かい合って座して食事中。
畳の上に置かれた膳には水神様の作った味噌汁や漬物、山菜の天ぷらが準備されている。
水神様「では、その子は和子さんの親友なんですね?」
和子「親友っていうか、悪友っていうか」
さっきから水神様に聞かれるまま、和子は自分の生い立ちを説明している。
水神様「だけど、とても仲がいいんですね。羨ましいことです」
和子の話をほほえみながら聞いている水神様。
和子はつい夢中になって友人や生い立ちについて話しすぎて身を乗り出している。
和子「あ、ごめんなさい。私ばっかりこんなに話して」
水神様「いえ、和子さんの話はとてもおもしろくて僕は好きですよ。続けてください」
和子「あの、今度は水神様のことを教えてくれませんか?」
水神様「僕の話ですか? あまり、面白いものではありませんよ?」
和子「それでもいいです!」
和子(料理もお風呂も準備してもらって、自分の話ばかりなんて申し訳ない!)
水神様「そうですね。和子さんは、僕たち神様と呼ばれる存在がどうやって生まれるか、ご存知ですか?」
和子「もちろんです!」
和子(花嫁候補として生まれてきてから、神様についての勉強はしてきた。だから、一応知識はあるんだよね)
和子「神様は長年その地にいて、火や風、光が姿を形成した尊いものだと習ってきました」
水神様「面と向かってそう言われるとなんだか照れますけれど、大方当たっています。僕は大山という西日本の山の水が形になった者です。形になるまで僕は山の土の中にいたり、雲になったり、形は定まりませんでした。水、ですからね。こうして姿を得てからは、今度は神様という名前を頂いて、大地に水を降らせる役割を持つようになりました」
和子「それじゃ、水神様にとっての幼少期は、水だった頃ということですか?」
水神様「そういうことになります」
和子「それじゃ、傲慢になったり、嫌なヤツになるのは神様になってから?」
突然の質問に水神様がキョトンとする。
その顔を見て和子は自分が調子に乗ってなにを質問したのか気がついた。
和子「あ、ごめんなさい! 友達が……水がよくそう言ってたんです! でも、水神様はなんていうか、とても器が大きいというか、噂とは全然違いました!」
慌てる和子に吹き出して笑う水神様。
水神様「それはありがとうございます。それよりも、和子さんは水さんという方ととても仲がいいんですね」
和子「え……まぁ、そうですね。幼い頃からの友達なので」
水神様「僕はできれば、和子さんにとっての水さんを超える存在になりたいものです」
和子「え?」
聞き返しても、水神様はなにも言わなかった。
☆☆☆
○邸宅の和子の部屋。
翌朝。
和子「よし! 昨日はしっかり眠ったし、今日はやらかさないように気をつけなくちゃ」
すでに身支度を整えて布団も上げている。
和子「まずは水神様を起こしにいかなきゃね!」
○水神様の部屋。
屋敷の最奥にある、最も広い和室。
和子「水神様、起きてますかー?」
声をかけながらガラッと障子を開く。
そこには着替え途中の水神様の姿。
和子「ご、ごごご、ごめんなさい!」
慌てて障子を閉めてずるずると座り込み、赤面する。
男性の体を見たのは初めての経験だった。
水神様「大丈夫ですか?」
着替えを終えて部屋から出てきた水神様が、座り込んだままの和子を心配する。
和子「さ、さっきは失礼しました!」
勢いよく立ち上がり、頭を下げる。
水神様「そんなに気にすることじゃありませんよ。それより、和子さんは早起きなんですね。今日は一緒に朝食を作りましょうか」
和子「は、はい!!」
☆☆☆
○校舎内。
午後からはみんな校舎内で友人を作る時間や、個々に勉強する時間になる。
さざなみのようにはしゃぐ同級生たちはみんな艶やかな着物姿をしている。
神様の花嫁候補たるもの、いかなるときも気を抜いてはいけない。
和子(うわぁ。昨日の入学式のときもそうだったけど、みんなきれいな着物!)
女子生徒A「昨日は煮物を作ったの。お母さんに教えられた味よ」
女子生徒B「あら、素敵ね。私は華道を習っていたから、昨日さっそく神様の部屋に飾ってもらったの。喜んでらしたわよ」
和子(みんな、頑張ってるんだ……)
女子生徒A「あなたは、どう?」
和子「え、わ、私!?」
和子(昨日はなにもしてないし、今日も朝から失敗しちゃったし……)
女子生徒B「昨日校長先生が言われた通り、ここへ来る子はみんな特別なのよ。なにせ、生まれたときから神様の花嫁になることが決まってるんだもの。うまく行っているに決まってるじゃない」
くすくすと笑う女子生徒に悪気はなく、和子の胸は痛む。
和子(みんな、ちゃんと努力してここまで来たんだ。なのに私はなにもしてない)
女子生徒A「花嫁修業はこれからでもできるわ。だけど神様に恥をかかせるようなことだけはないようにしなきゃね」
和子「そ、そうだよね……」
和子(水神様の花嫁候補は私だけ。私が頑張らないと、水神様が恥をかくことになるんだ!)
決意を新たにするため、拳を握りしめる。
☆☆☆
○水神様の庭園。
池の金魚を見つめている和子。
和子「今日も綺麗だね」
元気のない声で呟いて餌をやる。
和子(自分の不甲斐なさを嘆くってことは、それだけ水神様に惹かれているということ?)
和子「私、どうしよう」
神様の花嫁候補になることは決められていたことだけれど、相手を好きになるなんて思いもよらなかった。
どうせ自分は選ばれないだろうと思っていたし、まさか花嫁候補が自分1人だなんて思ってもいなかった。
思い悩んで池のふちに座り込んでしまったとき、水神様が駆け寄ってくる。
その顔には少しの焦りが滲んでいる。
和子「そんなに焦ってどうしたんですか?」
水神様「和子さんの帰りが遅いので心配しました」
和子「ご、ごめんなさい!」
和子(あぁ、私ここへ来てからあやまっってばかりだ。きっと水神様だって呆れてる)
しかし、水神様は心底安心したように溜息をはいて微笑み、和子の手を握りしめた。
水神様「あなたが無事に戻ってきてくれてよかった」
和子「え……?」
水神様「僕はあなたが来るまでずっとこの屋敷で1人だったんです。実はとても寂しかったんですよ?」
小首を傾げて困り顔で微笑む。
和子「神様でも、寂しいことってあるんですか?」
水神様「僕だって寂しいとか、悲しいとか感じます。だから、和子さんが来てくれて本当によかった」
微笑む水神様に胸がキュンとする。
どんどん惹かれていくことに気がついて赤面する。
水神様「さぁ、戻りましょう。今晩も一緒に料理をしましょう」
和子「い、いえ。今晩は私が! 煮物を作りますから!」
水神様「おや、本当ですか? それは楽しみですね! とっても!」
飛び跳ねんばかりに喜ぶ水神様に、和子は増々顔を赤くする。
邸宅内には12畳ほどの和室が10部屋存在している。
水神様「ここはお風呂。ここが台所。それからこっちが……」
広い家屋の案内を終えたあと、今日から和子の部屋になる和室へ案内される。
水神様「ここが和子さんの部屋です。一通り揃えいるつもりですが、なにか足りないものがあったらなんでも言ってください」
和子「はい……」
和子(これからここで暮らすなんて信じられない気分)
☆☆☆
○邸宅の和子の部屋。
和子は1人で畳の上に横になっている。
和服が乱れているが、気にしていない。
和子「なぁんか拍子抜けしちゃった。神様ってもっと傲慢で、嫌なやつだと思ってた」
(回想シーン)
○田園風景。
8歳の和子。
赤い和服を着ている。
友人(水草の擬人化。黒い髪の毛に細い手足を持つ、和子と同年代の男の子。名前は水)と2人で外で遊んでいる。
水「お前、神様の花嫁になるんだってな?」
和子「うん! 生まれたときから決められてることなんだって!」
嬉しそうに飛び跳ねる和子。
自分は特別なのだと、生まれた時から聞いてきた。
17歳になると特別な学校へ入学することも決まっている。
入学後に花嫁修行をするものの、ほとんどの子がそれ以前から頑張っているらしい。
和子ももう少し成長したら家庭内での花嫁修業が始まるが、それも誇らしく感じている。
水「浮かれちゃって、神様っていうのは傲慢で、嫌なヤツなんだぞ?」
和子「えぇ? そうなの?」
水「当たり前だろ! だって、自分を神だなんて思ってるんだからなぁ。オレたちのことなんて、家来としか考えてないって。だから結婚したら、きっと1日中家事と身の回りの世話ばかりさせられるんだぞ!」
(現在)
○邸宅の和子の部屋。
いつの間にか眠っていた和子は飛び起きる。
和子「嫌な夢見ちゃった……」
夢はこの学校へ来るのが嫌だった出来事だった。
友人の水は事あるごとに神様はイジワルだと和子に伝えてきた。
そのため、10歳になってから始まった家庭内での花嫁修業はほとんどさぼってばかりだった。
入学式当日に普段着を着てきたのも、せめてもの抵抗だったのだ。
障子を開けると窓から西日が差している。
ギョッと目を見開く和子。
和子(いつの間にこんなに眠っちゃったの!? もう夕飯の支度の時間じゃない!)
長い廊下を滑るように走って台所へ。
そこでは水神様がお味噌汁を作っている最中だった。
水神様「おや、和子さん。しっかり休憩できましたか?」
にこやかな水神様に青ざめる和子。
和子「すみません! 私がやりますから!」
水神様「これくらい、僕でもできることですよ」
和子「そ、それじゃお風呂の準備をっ」
水神様「それも、もう終わっています」
和子「そんな……!」
和子(嫌々とはいえここまで来たのに。入学当日なのに、やらかしてしまった……!!)
水神様「さ、食べましょうか」
ポンッと頭を撫でられて、心臓がドキッと撥ねる。
和子(初めて見たときもそうだったけど、なんだろうこの胸のドキドキ感……)
☆☆☆
○邸宅の一室。
ふたりは向かい合って座して食事中。
畳の上に置かれた膳には水神様の作った味噌汁や漬物、山菜の天ぷらが準備されている。
水神様「では、その子は和子さんの親友なんですね?」
和子「親友っていうか、悪友っていうか」
さっきから水神様に聞かれるまま、和子は自分の生い立ちを説明している。
水神様「だけど、とても仲がいいんですね。羨ましいことです」
和子の話をほほえみながら聞いている水神様。
和子はつい夢中になって友人や生い立ちについて話しすぎて身を乗り出している。
和子「あ、ごめんなさい。私ばっかりこんなに話して」
水神様「いえ、和子さんの話はとてもおもしろくて僕は好きですよ。続けてください」
和子「あの、今度は水神様のことを教えてくれませんか?」
水神様「僕の話ですか? あまり、面白いものではありませんよ?」
和子「それでもいいです!」
和子(料理もお風呂も準備してもらって、自分の話ばかりなんて申し訳ない!)
水神様「そうですね。和子さんは、僕たち神様と呼ばれる存在がどうやって生まれるか、ご存知ですか?」
和子「もちろんです!」
和子(花嫁候補として生まれてきてから、神様についての勉強はしてきた。だから、一応知識はあるんだよね)
和子「神様は長年その地にいて、火や風、光が姿を形成した尊いものだと習ってきました」
水神様「面と向かってそう言われるとなんだか照れますけれど、大方当たっています。僕は大山という西日本の山の水が形になった者です。形になるまで僕は山の土の中にいたり、雲になったり、形は定まりませんでした。水、ですからね。こうして姿を得てからは、今度は神様という名前を頂いて、大地に水を降らせる役割を持つようになりました」
和子「それじゃ、水神様にとっての幼少期は、水だった頃ということですか?」
水神様「そういうことになります」
和子「それじゃ、傲慢になったり、嫌なヤツになるのは神様になってから?」
突然の質問に水神様がキョトンとする。
その顔を見て和子は自分が調子に乗ってなにを質問したのか気がついた。
和子「あ、ごめんなさい! 友達が……水がよくそう言ってたんです! でも、水神様はなんていうか、とても器が大きいというか、噂とは全然違いました!」
慌てる和子に吹き出して笑う水神様。
水神様「それはありがとうございます。それよりも、和子さんは水さんという方ととても仲がいいんですね」
和子「え……まぁ、そうですね。幼い頃からの友達なので」
水神様「僕はできれば、和子さんにとっての水さんを超える存在になりたいものです」
和子「え?」
聞き返しても、水神様はなにも言わなかった。
☆☆☆
○邸宅の和子の部屋。
翌朝。
和子「よし! 昨日はしっかり眠ったし、今日はやらかさないように気をつけなくちゃ」
すでに身支度を整えて布団も上げている。
和子「まずは水神様を起こしにいかなきゃね!」
○水神様の部屋。
屋敷の最奥にある、最も広い和室。
和子「水神様、起きてますかー?」
声をかけながらガラッと障子を開く。
そこには着替え途中の水神様の姿。
和子「ご、ごごご、ごめんなさい!」
慌てて障子を閉めてずるずると座り込み、赤面する。
男性の体を見たのは初めての経験だった。
水神様「大丈夫ですか?」
着替えを終えて部屋から出てきた水神様が、座り込んだままの和子を心配する。
和子「さ、さっきは失礼しました!」
勢いよく立ち上がり、頭を下げる。
水神様「そんなに気にすることじゃありませんよ。それより、和子さんは早起きなんですね。今日は一緒に朝食を作りましょうか」
和子「は、はい!!」
☆☆☆
○校舎内。
午後からはみんな校舎内で友人を作る時間や、個々に勉強する時間になる。
さざなみのようにはしゃぐ同級生たちはみんな艶やかな着物姿をしている。
神様の花嫁候補たるもの、いかなるときも気を抜いてはいけない。
和子(うわぁ。昨日の入学式のときもそうだったけど、みんなきれいな着物!)
女子生徒A「昨日は煮物を作ったの。お母さんに教えられた味よ」
女子生徒B「あら、素敵ね。私は華道を習っていたから、昨日さっそく神様の部屋に飾ってもらったの。喜んでらしたわよ」
和子(みんな、頑張ってるんだ……)
女子生徒A「あなたは、どう?」
和子「え、わ、私!?」
和子(昨日はなにもしてないし、今日も朝から失敗しちゃったし……)
女子生徒B「昨日校長先生が言われた通り、ここへ来る子はみんな特別なのよ。なにせ、生まれたときから神様の花嫁になることが決まってるんだもの。うまく行っているに決まってるじゃない」
くすくすと笑う女子生徒に悪気はなく、和子の胸は痛む。
和子(みんな、ちゃんと努力してここまで来たんだ。なのに私はなにもしてない)
女子生徒A「花嫁修業はこれからでもできるわ。だけど神様に恥をかかせるようなことだけはないようにしなきゃね」
和子「そ、そうだよね……」
和子(水神様の花嫁候補は私だけ。私が頑張らないと、水神様が恥をかくことになるんだ!)
決意を新たにするため、拳を握りしめる。
☆☆☆
○水神様の庭園。
池の金魚を見つめている和子。
和子「今日も綺麗だね」
元気のない声で呟いて餌をやる。
和子(自分の不甲斐なさを嘆くってことは、それだけ水神様に惹かれているということ?)
和子「私、どうしよう」
神様の花嫁候補になることは決められていたことだけれど、相手を好きになるなんて思いもよらなかった。
どうせ自分は選ばれないだろうと思っていたし、まさか花嫁候補が自分1人だなんて思ってもいなかった。
思い悩んで池のふちに座り込んでしまったとき、水神様が駆け寄ってくる。
その顔には少しの焦りが滲んでいる。
和子「そんなに焦ってどうしたんですか?」
水神様「和子さんの帰りが遅いので心配しました」
和子「ご、ごめんなさい!」
和子(あぁ、私ここへ来てからあやまっってばかりだ。きっと水神様だって呆れてる)
しかし、水神様は心底安心したように溜息をはいて微笑み、和子の手を握りしめた。
水神様「あなたが無事に戻ってきてくれてよかった」
和子「え……?」
水神様「僕はあなたが来るまでずっとこの屋敷で1人だったんです。実はとても寂しかったんですよ?」
小首を傾げて困り顔で微笑む。
和子「神様でも、寂しいことってあるんですか?」
水神様「僕だって寂しいとか、悲しいとか感じます。だから、和子さんが来てくれて本当によかった」
微笑む水神様に胸がキュンとする。
どんどん惹かれていくことに気がついて赤面する。
水神様「さぁ、戻りましょう。今晩も一緒に料理をしましょう」
和子「い、いえ。今晩は私が! 煮物を作りますから!」
水神様「おや、本当ですか? それは楽しみですね! とっても!」
飛び跳ねんばかりに喜ぶ水神様に、和子は増々顔を赤くする。