泣きっ面に恋々!─泣き虫な身代わり花嫁と、泣き顔フェチな純真王子の恋々な結婚事情─
ステラがふと視線に後ろを振り得るとジオが帰宅していて、肩がビクリと跳ねてしまった。
「ステラ、ただいま!」
「ジオ様、おかえりなさい」
ステラが労いの言葉をかけるだけで、ジオが端正な顔を崩して嬉しそうに笑ってくれる。
その顔を見ればステラの大ため息は止まって、ほっと安堵の息が出る。
(殺すはずの相手を見てホッとするなんて、何をやっているのかな私……)
暗殺をたくらむ花嫁に、毎日優しい夫には日に日に胸がチクチク痛んだ。
帰宅したジオは夫婦の寝室を見回して感嘆の声をあげる。
「今日も部屋ピッカピカ!ありがとうステラ」