泣きっ面に恋々!─泣き虫な身代わり花嫁と、泣き顔フェチな純真王子の恋々な結婚事情─
花嫁、暗殺がんばってます
ジオとの町散歩を終えて、夫婦の寝室に戻って夜を迎えたステラにはミッションがあった。
敗色濃厚な「夜這い暗殺大作戦」である。
「おやすみ、ステラ」
「はい、おやすみなさいジオ様」
ステラは大きな夫婦用ベッドに独り寝転び、ジオは木の長椅子に寝転ぶ。
ステラがこの部屋にやってきてから、ジオは文句一つも言わずその場所でずっと寝てくれていた。
(一切触れず、一切誘われたこともない)
今夜は眠らない覚悟のステラは、ベッドに誘われない花嫁について想いを巡らせることになった。
(ジオ様はお優しいけど、私のこと大事にしてくれてるけどきっと……私のことお好きではないのよね。
政略結婚の義務でここまでお優しいなんて……すごいお方……)