泣きっ面に恋々!─泣き虫な身代わり花嫁と、泣き顔フェチな純真王子の恋々な結婚事情─
キドナ国王は、
メイドを孕ませ認知もせず、
勝手に育った娘を野蛮な国への身代わり花嫁に仕立て、
嫁いだ先で夫を暗殺しろと命じた。
ステラは頭の芯が冷えに冷えて、ただ怖かった。
「王太子暗殺と共に、我が国はカルラ国に攻め入る」
「でもお父様、また竜巻を使われるのでは?」
「この前は奇襲に怯んだが、こちらが先手をとり、カルラ国を戦場にすれば竜巻も打てず我が国の軍事力には敵うまい。
調べたところ、仮面の男ほどの魔法の使い手は国に一人で、カルラ国は鉄砲一つ持たぬ弱輩だ。
多勢に無勢は真理!」
「さすがですわお父様!」
「あの国には黄金もあると聞く。魔法使いも売り飛ばせば値が付く。カルラ国は宝の山だ」
優雅にお茶を手に取り、人の命をおもちゃにする話を彼らは楽しそうに話した。ステラには彼らがますます人間に見えなかった。
長い間ステラはその場に立たされ続けた。