泣きっ面に恋々!─泣き虫な身代わり花嫁と、泣き顔フェチな純真王子の恋々な結婚事情─
ステラはジオが騎士団のお仕事で留守中に紙に丁寧にレシピを書き起こす。言われた通りに母のベーコンシッチューをじっくり想像して書いた。
部屋で紙に向かっていると、開けた窓からは赤い鳥がやって来てずっとステラの書き物を見ていた。
「ジオ様は書いてねって言っていたけど、このベーコンは作り方が難しくて。
特別な窯や調味料がないと作れないの。
だから、カルラ国では食べられないんだけどね」
ステラは眉を綺麗にハの字に下げて哀し気に赤い鳥に笑いかけた。赤い鳥はぴょんぴょんと飛んでステラの頭の上に乗った。まるで励ますかのような動きだった。
「ありがとう、鳥さん。でもお母さんの味を思い出すのは楽しかったな」