泣きっ面に恋々!─泣き虫な身代わり花嫁と、泣き顔フェチな純真王子の恋々な結婚事情─
ステラの背中を押してジオが向かった場所は、騎士団の食堂だ。
まだ食事時には早いようで、食堂はがらんとしている。ジオは調理場にさっさと入って行って声を張った。
「サーシャ!お願いあるんだけど!」
「はーい!今行くー!」
ジオが声をかけると明るい声がして、パタパタと軽やかに薄紅色の髪を靡かせた女性が現れた。
(サーシャ様……!)
ステラが迷子になった時に一度会ったきりの義理の母だ。王妃とは思えないほど気さくな人だった。
「ステラちゃん!私の娘!」