泣きっ面に恋々!─泣き虫な身代わり花嫁と、泣き顔フェチな純真王子の恋々な結婚事情─
「レオが来たら、余計なことしか言わないから嫌だ。我慢してサーシャ」
「レオさん来たらそこが嵐だからね。そこが好きだけど」
ジオは紙を食す母に驚く様子もなく雑談して、サーシャも平気で紙をむしゃむしゃしている。
(え、この人、人間?)
ステラは失礼な言葉を口には出さなかったが、驚き過ぎて逃げたかった。ステラの常識では人間は紙を食べない。
「よし、食べた!いくよー!」
ステラがまだまだ逃げたい思いでいると、サーシャが両手を祈りの形に組み合わせた。
「え……?」
ステラの目の前に忽然と熱々のベーコンシッチューが現れた。
赤、緑、黄色の彩り野菜と薄紅色の燻製肉が浮かんだ、乳白色のとろりとしたスープだ。
しかも、よく母が使っていた皿と全く同じ皿が使われている。香りも母が作ったものと全く同じだ。
瞬きを忘れるほど固まってしまったステラに、ジオがスプーンを手渡す。
「食べてみて?ステラ」