泣きっ面に恋々!─泣き虫な身代わり花嫁と、泣き顔フェチな純真王子の恋々な結婚事情─


ステラの様子を見ている限り、手紙に髪の毛を入れて送るのがキドナ国の吉報の風習というわけでもなさそうだ。


「ステラ、おいで」


ジオは震えて抱きつくステラを軽々と横に抱き上げて、髪の毛が散らばった部屋から逃げ出した。


怯えるステラを抱いたジオは廊下を歩き別室を目指す。頭の中は意味不明がグルグル回っていた。


(何だこれ、ステラは何を隠してる?)


ジオにもステラが抱えている闇が顕在化した瞬間だった。


白い髪の毛入りの手紙のせいで、ステラはジオに秘密を明かそうと緩みかけていた口を、また堅く固く噤んだ。


夫婦の寝室に残された一本針時計は、残り半分を指していた。
< 240 / 480 >

この作品をシェア

pagetop