泣きっ面に恋々!─泣き虫な身代わり花嫁と、泣き顔フェチな純真王子の恋々な結婚事情─
数日後。白髪が散らばった部屋をジオが片づけてくれて、ステラは再び夫婦の寝室に戻った。
バルコニーに出て赤い鳥が肩にやって来ると、ステラは地を抉るほどのため息をついた。
「手紙のあの髪の毛、真っ白だった。たぶん、お母さんのなの」
ステラがまた目に涙を浮かべてバルコニーの柵に頭をもたげる。
「暗殺のことバラすなよって釘刺された気がした」
病に侵された母は古い家の一室で、今頃どう過ごしているのだろうか。ステラには何もわからなかった。
「早く暗殺しないと、お母さんを殺すって催促だよね……」