泣きっ面に恋々!─泣き虫な身代わり花嫁と、泣き顔フェチな純真王子の恋々な結婚事情─


石碑に魔法をかけ終えたジオは立ち上がった。ジオはステラを手招きして歩いていく。次の石碑を目指すのだ。


ステラが歩き始めると、また肩に赤い鳥がやってきた。


ステラが足を早めてジオの隣に並んで顔を覗くと、ジオの紫色の瞳が珍しく揺らいでいた。


「カルラ国は数年前まで滅んだ国って言われてたんだけど。この紫色の森の中で細々生きてた」


紫色の森の中に差しこむ木漏れ日の中を、二人はゆっくり並んで歩いて行く。


「国が元気になってくるとさ、外の国とも交流したくなるでしょ?カルラ国は隣人と仲良くしたくて、隣国に顔を出すようになったんだ」


赤い鳥はジオの肩の上に飛び移っていた。慰めるような行為にも見えた。


「だけど、魔法を使う人間はもう他の国にはいなくてさ」
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