泣きっ面に恋々!─泣き虫な身代わり花嫁と、泣き顔フェチな純真王子の恋々な結婚事情─
前を向いて歩くジオの声は淡々としていたが、悲しい響きが隠せなかった。
「異端者って呼んで迫害する人もいれば、魔法使いを売りさばいてやろうっていう人も現れた」
ステラの胸がドクンと脈打った。「魔法使いの人身売買」の話を、ステラは他人事ながらユア王女の側で聞いたことがあった。
「昔、カルラ国を出て行った魔法使いの人たちは、たくさん売られたみたい。
今となっては本当のところはよくわからないんだけど」
ジオの悲痛な声に、ステラの背筋が冷たくなる。ステラが知る限り、キドナ国に魔法使いは一人もいなかった。魔法使いは機械化が進むキドナ国では過去の異物だ。
「アッ!」
「っと危ない」