泣きっ面に恋々!─泣き虫な身代わり花嫁と、泣き顔フェチな純真王子の恋々な結婚事情─
ステラが国王レオナルドの魔法を見たのはたった一度だ。だがあの竜巻を操る彼が怒り狂ったとしたら、何も残らないと言われても納得だった。
「怒ったレオなんて誰の手に負えない。もしかしたらサーシャも一緒に暴れるかもしれない。あの二人は本当に国民を愛してるから」
全面的な争いにいたってしまえば、カルラ国も、キドナ国も大きな損害を受けるのはわかりきっていた。
「だから、お互いのために消える道を選んだんですね」
「そう、遠征はカルラ国が消える準備」
ジオは石碑を前にして、大切にし合えない隣人との現実に、哀しみを宿した顔で微笑んだ。