泣きっ面に恋々!─泣き虫な身代わり花嫁と、泣き顔フェチな純真王子の恋々な結婚事情─
ジオが地に伏したのを確認して、カルランは地に下り立った。人間大好きなカルランは、人間とのお遊びも大好きだ。
「さて、次はお楽しみの……ステラじゃ」
カルランがジオを覗き込んでから、じっとジオの傍らを注視した。
「この辺りかの」
ジオの意識消失を受けて、ステラを隠した封印が微かに緩んだ。綻び程度の緩みだったが、神獣カルランにすれば決定的な隙だった。
カルランは赤い大きな翼を振るい、封印の隙間に風を流し込んで封印を瓦解させた。
「ジオ様!!」
封印を解かれて姿を現したステラは、倒れるジオの側で叫んでいた。封印された人間は封印されていない人間に触れられない。ステラがジオを抱き起こして抱き締めると、荒い息を感じた。
(良かった、生きてる!)