泣きっ面に恋々!─泣き虫な身代わり花嫁と、泣き顔フェチな純真王子の恋々な結婚事情─
鳥神獣、カルランの寵愛を受けたステラは願いを叶える最大のチャンスだった。
ステラではどうあっても殺せないジオをこのまま殺してくれと言えば、暗殺は成功できた。
母を助けて欲しいと言えば、母は助かったかもしれない。
だが、ステラは今、目の前で苦しむジオを放っておけなかった。
彼の苦痛を取り除く以外の願いなど思い浮かばなかったのだ。
カルランの魔法で傷が癒えたジオがひょいと起き上がると、ステラは泣いたままジオの首に抱きついた。
「ジオ様、ご無事でよかったです……!」
こんなことに願いを使ってしまって良かったのかとジオは恐縮だったが、ステラの労わりは愛しかった。心配され慣れないジオはステラに心配されると非常に心昂る。
「ステラ。助けてくれてありがとう」
ジオは抱きつくステラを優しく抱き返した。
「ハァ、相変わらず人間は愚かじゃ」
か弱い人間二人が想い合い庇いあった姿に、カルランはため息をついた。
「だがそこが、いつも好きじゃ」