泣きっ面に恋々!─泣き虫な身代わり花嫁と、泣き顔フェチな純真王子の恋々な結婚事情─
真摯な対応を心がける立派な息子のジオを前にして、若い頃は大層な破天荒なモテ男だったレオナルドは驚愕に顎が外れかけた。
「嫌がられてもキスくらいやるのが男だろ?」
「俺、レオみたいに野蛮じゃないから」
「そういうのは野蛮って言わない。女ってのは口では嫌って言いつつ駆け引きの強引さを求めてて」
「もうレオさん、ジオに余計なこと言わないの!」
レオナルドの後ろから、サーシャの元気な声が響いた。レオナルドは顔を緩めてサーシャをふり返る。
ジオもレオナルドを避けてサーシャを覗いたつもりだった。だが、ジオの目にはサーシャの斜め後ろで控えていたステラしか入らなかった。
サーシャに手を引かれて俯き加減のステラは、カルラン様の翼にちなんだ赤いドレスを纏っていた。
「ステラ、え、あ、え?!可愛い!」