泣きっ面に恋々!─泣き虫な身代わり花嫁と、泣き顔フェチな純真王子の恋々な結婚事情─
二人で遠征に行った時もジオは「隣人を大切に」と教えられると言っていた。
(キドナ国にさえ温情をかけようとするジオ様には『隣人を大切に』の信仰が強く根付いていらっしゃるのね)
ステラはジオの根っこを知って深く納得した。「隣人を大切に」の意識が浸透した優しい国で、ジオという優しい人間は育まれたのだ。
「だから実は俺も、王太子ってのは内緒。子どもたちは俺のこと、ただの騎士団のジオって思ってる」
人差し指を一本立てて口の前でシーと内緒のポーズを取ったジオの顔が、淡い火の灯りで照らされた。
ステラは誰より優しい彼の笑みにつられて、柔らかく微笑んだ。