泣きっ面に恋々!─泣き虫な身代わり花嫁と、泣き顔フェチな純真王子の恋々な結婚事情─
花嫁、よく頑張りました
「ここです」
城下町から少し離れた古びた一軒家。
風が吹けば揺れるようなこの家が、ステラの実家だ。王女付きのメイドであれ、大した給金はなく長時間労働の奴隷のような扱いだった。
それでも仕事がないよりはマシだ。母娘二代でメイドを務めて、日々を二人慎ましく暮らしていたのだ。
「何?この匂い」
木の扉を開ける前から、ステラの鼻には異臭がついていた。
家が腐臭を放っている。