泣きっ面に恋々!─泣き虫な身代わり花嫁と、泣き顔フェチな純真王子の恋々な結婚事情─

人の悪意の底知れなさに、ステラを抱き締める手が小さく震えてしまう。


「あら、おかえりなさいステラ。その方が私の義理の弟かしら?」


ステラと母親のぼろぼろの住まいに不似合いな、絢爛なドレスを纏ったユア王女が現れた。


護衛を引き連れたユア王女は、にこりと優雅に微笑んだ。


「暗殺はどうなったのステラ?お姉様の言うことが聞けなかったのかしら?」


領地の山壁に突然穴が開いた事態を、キドナ国王は他国からの攻撃とみなした。


カルラ国からの攻撃なら、ステラの実家に誰か現れるかもしれないとユア王女はここに足を運んだのだった。


王女たるもの鼻が利いた。

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