泣きっ面に恋々!─泣き虫な身代わり花嫁と、泣き顔フェチな純真王子の恋々な結婚事情─

ステラの視界には、物が積み重なった惨状が広がった。夫婦の寝室と同等の広さがあるはずの部屋は埃っぽかった。まさに物置き場である。


(小石がいっぱい。何の意味が?)


木箱の中にじゃらじゃらと無数に置かれた小石をステラは一つ手に取った。


道端に落ちていそうな何の変哲もない石だ。他にもすっかりカラカラに乾いて茶色くなった花冠や、たくさんの本に、剣など統一性のない物が無造作に置かれている。


(ジオ様って、物をしまい込む方なのですね……)


優しくて整った顔をして、爽やかな風を背負うジオの意外と雑なところを見て、ステラは親近感が湧いた。


「よし、やります!」


身代わり花嫁、本職メイドのステラはぐいと腕まくりした。

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