泣きっ面に恋々!─泣き虫な身代わり花嫁と、泣き顔フェチな純真王子の恋々な結婚事情─
ジオは新米花嫁に仕事を残し、王城内にある夫婦の寝室を後にして、カルラ国騎士団の訓練場に向かった。
訓練場では、すでに一人の女性が剣を振るっていた。ジオの幼馴染であるルキナだ。
「お、新婚色男じゃん。今日は部屋から出て来なくても良かったのに」
「ルキナ!俺と手合わせして!」
ルキナはくるんと癖のある黒髪を一つにまとめて、剣を抜いた。ジオも剣を抜いてルキナに向けた。
「どうせ、お優し過ぎてヤレなかったんだろ、ヘタレが」
ルキナが一歩踏み出し、鋭い音を立てて剣がぶつかり合う。ルキナの目元には色っぽい泣きボクロがついていてえっちだというのに、彼女の身体は屈強に鍛えられている。
「優しくしてダメなのかよ?!」
ジオは少しの遠慮もなくルキナに打ち込み、ルキナも激しく打ち合いを返す。無心の攻防が続き、剣を弾き飛ばされたのはジオだった。
「優しいだけじゃダメだ。何も守れない」