泣きっ面に恋々!─泣き虫な身代わり花嫁と、泣き顔フェチな純真王子の恋々な結婚事情─
カルランは渋々立ち上がって、赤い翼を振るった。
「トリィの記憶の共有は、一度きりじゃ」
ステラの握り締めていた黒玉が光を放ち始めた。
「ありがとうございますカルラン様!」
「強くあろうと前を向く様、守ろうともがく様、とくと見せてもろうた。
人間は……これだから大好きじゃ」
カルランはジオのお礼を聞いてから、水面に波紋を一つだけ残して消えてしまった。
カルランは人間の弱さゆえに得る尊い強さを愛してやまない。愛深き神獣だ。
「お母さん……!」
ステラが手の平の上の黒玉を覗き込むと、映像が浮かび上がる。
そこには母がいた。