泣きっ面に恋々!─泣き虫な身代わり花嫁と、泣き顔フェチな純真王子の恋々な結婚事情─
手紙を読み切った母は、にこりと幸せそうに笑った。ステラを育ててくれた優しい笑顔だった。
「愛してるよ、ステラ。
死んでもずっと、愛してるからね」
母は立ち上がり、手紙を持ったまま、もう片方の手に持ったナイフを振り上げた。そこでトリィは飛び立ってしまったのか、映像は途切れた。
「ッ……お母さん!」
母は消えて、黒玉は割れてしまった。泣き崩れるステラをジオは強く抱き締める。
愛しいステラを育んだ母は、愛にあふれた見事な人だった。
青々湖に星が映るまで、泣き続けるステラをジオは抱き締めた。
ステラは誰より幸せにならなければいけない女性だと、ジオは胸に刻んだ。