泣きっ面に恋々!─泣き虫な身代わり花嫁と、泣き顔フェチな純真王子の恋々な結婚事情─
話に身が入っていなくて叱られるかと思ったが、サーシャはにぱっと笑っただけだった。
(さすがジオ様のお母様、お優しい……)
サーシャは長い薄紅色の髪を靡かせてステラの隣を陣取り、騎士団へと案内し始めた。
娘と呼んでくれるサーシャの温かさに、ステラはここに来て初めて、深く息ができた。
光が満ちる塔の階段を二人で並んで下っていると、サーシャは眩しく笑った。
「ジオは自慢の息子だから、きっとステラちゃんと仲良くできると思うの!ジオのことよろしくね!」
あまりに輝かしい善意に満ちた笑顔に突き刺され、ステラの罪悪感が浮き彫りになった。
ステラは困り眉のまま、ひとつ静かに頷いた。