泣きっ面に恋々!─泣き虫な身代わり花嫁と、泣き顔フェチな純真王子の恋々な結婚事情─
ステラは首から下げた筒を何度も握り締めて自分の役割を確認した。この小さな銀の筒には、粉状の毒が入っている。
ユア王女に持たされた
猛獣をも殺せる、無味無臭の毒だ。
二人で遊びに行くならば、暗殺の好機である。ステラは任務を遂行してできる限り早く、一人で病に苦しむ母の元へ帰りたい。
(ジオ様にこれを飲ませないといけない。可愛いとか、思ってる場合じゃない)
ジオに毒を飲ませて殺害し、キドナ国へ「ある手段」を使って速やかに暗殺完了を連絡する。
それがステラに課せられた暗殺計画の全貌だ。
(頑張らないと……)