泣きっ面に恋々!─泣き虫な身代わり花嫁と、泣き顔フェチな純真王子の恋々な結婚事情─
ステラは細かく息を繰り返してゆっくり緑の森の中を歩く。緊張が解けないステラの隣でジオは絶え間なくよく喋った。
「20年くらい前はこの森全部が毒気で侵されててね」
ジオはステラに、いっぱい知ってもらって、ジオ自身もカルラ国自体も、好きになってもらいたかった。
「毒気?」
「毒の空気だよ。今は清浄なところが増えて、湖でも遊べるようになったんだ」
新緑の森を抜けて、一歩踏み出せば紫色の葉が生い茂る場所の前でジオが足を止めた。
ジオがステラをふり返ってにっこり笑う。
「紫色の森では、ステラはマスク着用ね!」