泣きっ面に恋々!─泣き虫な身代わり花嫁と、泣き顔フェチな純真王子の恋々な結婚事情─
「そうなの?キドナ国にはなかった?」
「あるかもしれませんが、私は王都から出たことがなくて。こんなにたくさんの水は知らなくて、そのちょっと、あの」
「怖い?」
唇を噛みしめたまま青い目を潤ませてジオを見上げたステラは、こくんと一つ頷いた。
ジオは騎士団連中の中では背の高い方ではない。だが、ステラからすれば十分高身長で、ジオを見つめれば自然と上目遣いになる。
(潤んだ瞳、上目遣い……)
ジオはステラの、一挙一動が好みど真ん中で真顔になるしかない。
(可愛いな、この子)