帷くんは秘め事が大好きらしい


心がどす黒いモヤで汚れきるのに、そう時間はかからなくて。

4階の踊り場を踏みしめたと同時。

笑顔をキープしていたはずの顔の表情筋は、ストン。

見事に、全て落ちた。

多目的室までの廊下を歩きながら、私は重い溜息を吐き続ける。



モモちゃんにすら言えないよ。

本当は、ステージに立つのが怖いなんて。


私なんかを見たい人なんて、きっと誰もいない。


ステージに飛び出したら

『帰れ、帰れ』

アンチコールの大合唱が起きるかもしれない。


写真をパシャパシャ撮られて。

ネットにアップされて。

私と一緒に踊るモモちゃんと由乃ちゃんまで、ネット民に言いたい放題言われてしまうかもしれない。


大好きな二人を、悲しみの闇にひきずりこみたくない。

私のせいだから、なおさら。


応援合戦が始まるまでに、二人に言おう。

チアのダンスは、私一人だけで踊るからって。


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