帷くんは秘め事が大好きらしい
「えっと……私たちが……イジメ?」
「してない、してない」
「帷くん、勘違いしないでよ。まどか先輩が悪いことをしたから、注意しに行こうってだけの話で」
「私たちは、帷くんのことを思って……」
「まどか先輩が大好きなんだ、俺は」
「……へ?」
「うそ……だよね?」
「一人の女性として、特別に想ってる」
「帷くんは、まどか先輩に騙されてるんだよ」
「お願い、目を覚まして!」
「俺の大切な人を傷つけるなら、二度と俺に話しかけないで!」
俺は睨みつけた。
今までファンに突き刺したことがないくらい、おぞましい怒りの目で。
俺は瞳をさらに冷たく光らせると、ファンの子達に笑顔を一切見せずに歩きだし、競技を待つ人の群れに紛れ込んだ。