帷くんは秘め事が大好きらしい
「こっ…ここ、玄関だし。とりあえずリビングに上がらせてもらいたいなぁ……」
ダメもとで、一応伝えてみた。
このままだと心停止してもおかしくないと、身の危険を感じたから。
だってだって、本当に綺麗なんだもん。
王子様っぽく光る、ブルーサファイアのような帷くんの瞳が。
大好きな帷くんにこんな至近距離で見つめられ続けたら、どうなると思う?
キュン死しちゃうかもしれないよ。
モデルのお宅で変死騒ぎ。
そんなことが起きたら、帷くんは芸能界でお仕事ができなくなっちゃうかもしれないでしょ?
「ひゃっ!」
いきなり掴まれた、私の腕。
力強く引っ張られて、体が傾いていく。
自分の右頬が、帷くんの胸にぶつかったと思った時にはギュー。
大好きなぬくもりに、全身が包み込まれていた。
帷くんの手のひらが、優しく私の頭を撫でる。
いつくしむように何度も何度も撫でられ、幸せをかみしめずにはいられない。
帷くんは私の背中に回した腕に力を籠めると、弱々しい声を放った。