帷くんは秘め事が大好きらしい
「4時に来て……グルルカフェの裏口……」
私にしか聞こえないボリュームで、とんでもなく甘い声を漏らすんだもん。
「リボンはこれで良し。先~輩、急に腕なんか掴んでごめんね。オレって、オシャレに関しては見逃せない性格だから。それじゃー」
嵐が過ぎ去るように、帷くんが私の前からいなくなっても
「帷くん、まってよ~」
「私のリボンも直して~」
ファンの子たちの大移動が始まって、階段に一人ポツンと取り残されても
恋なんてしたことがない私は、自分の中に起きている甘い化学反応にうまく適応できなくて……
「不意打ちが甘いとか……ほんと無理……」
顔を両手で覆いながら、階段にしゃがみ込んだのでした。