帷くんは秘め事が大好きらしい

私をこのリビングに招き入れてくれた直後。

帷くんは私を、全身鏡の前に立たせた。


違う部屋に入っていって。

戻って来たかと思ったら、ガラガラガラ。

コロ付きのハンガーラックを、ガラガラガラ。

20着以上かかっている服を、私の体にあてる作業を始めたんだ。



意識を今現在に戻しますね。

できれば、今すぐ離れて欲しいのです。


後ろから抱きしめられてる?

恋人かって勘違いしちゃうほどの至近距離での、洋服選びなんか。


たまに帷くんの胸が、私の背中に当たって。

帷くんの腕が、私の肩に触れて。


甘い吐息が首筋にかかるし。


シャンプー? 洗剤? 香水?

とてつもなくいい香りが、私の鼻をかすめるし。


あぁぁぁ、もう。

なんか無理。

ドキドキを通り越して、頭がクラクラしてきちゃった。

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