"愛してる"は蝶よりも花よりもずっと脆い。
長い長いパーティが終わり、私は約束の高級フレンチに連れてきてもらっていた。

パーティではイマイチ食べた気がしなかったし、ここで美味しいものを堪能してやる。

(ちか)、お疲れさま。ずっと気を張りっぱなしで疲れたでしょう」

「そりゃあ、社長と違って私はこんな仰々しいパーティなんか初めてですからね。挨拶してる時なんて、生きてる心地しませんでしたよ」

「すまなかった。さぁ、好きなものを頼んでくれ」

「じゃあ、社長のおすすめでお願いします。こういうところもあまり来たことがないので」

「了解、(ちか)って結構食べられる?」

「人並みくらいじゃないですかね? そんなにいっぱいは食べられません」

「了解、じゃあこのコースにしようか。お腹いっぱいになったら無理しなくていいからね」

「ありがとうございます」

なんか社長がイケメンに見えてくるんだけど、これは一体どういうこと?

あのパーティの余韻がまだ抜けてないだけだよね?

「とりあえず、今日お疲れさま。早速で悪いけど、これからのことを話してもいいかな?」

「もちろんいいですけど、その…正式に入籍はしないんですよね?」

「いや、してもらうよ。戸籍上、明日から如月(ちか)になってもらう予定だ」

「やっぱり入籍しちゃうんですか? 社長あれですか、今流行りのノリで入籍的な?」

「軽いノリなんかで入籍するわけないだろ。ちなみに言っとくけど、俺は本気で(ちか)のことが好きだからね」

「それはなんで? そんなに関わりもないし、ていうか今日が初めてじゃない、話したりするの」

「でも俺は、(ちか)がうちの会社に入社してくるよりずっと前から知ってたよ。まぁ多分、(ちか)は覚えてないだろうけどね」

「前にどこかで会ったことあったっけ? ごめんね、私あんまり記憶力良くなくて」

「いいんだ、気にしないで。面接みたいなこと聞いて申し訳ないんだけど、(ちか)はどうしてうちの会社に入ろうと思ったの?」

「変な話、給料も良かったし私の家からも近くて。営業部でバリバリ活躍したいってずっと思ってたから、希望部署も迷わず営業部にしたわ」

(ちか)の頑張りは良く聞いているよ。営業成績もずっとトップなんだってな」

「まぁね、私の取り柄といえばそれくらいだし。頑張れば頑張るほど結果がついてくるって、頑張った甲斐があるなって思うし」

男性が圧倒的に多い営業部でトップを維持し続けるのは大変だけど、それがやりがいだしこれからも沢山頑張りたいんだよね。
< 12 / 15 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop