"愛してる"は蝶よりも花よりもずっと脆い。
馨 side

レストランを出て直ぐにタクシーを拾い、そのまま自宅へ直行。

なぜなら、この可愛い生き物をいつまでも俺の傍に置いておいたら理性が吹っ飛びそうだから。

さっさと家に帰ってベッドに寝かせて、俺はリビングで寝る覚悟まで決めていた。

それなのに、(ちか)は男心を全く分かっていない。

「あのねぇ、馨さん。今日のパーティ私ちゃんとできてましたか?」

「あぁ、きちんとできていたよ。それよりも(ちか)、もうお風呂に入って寝よう」

「私とお話したくないんですか〜?」

「お話するのは明日でもいいだろう? 結構酔ってるみたいだし、もう休んだ方がいいと思うよ」

「こんなの酔ってるうちに入りませんよ〜」

うへへっと俺に笑いかける(ちか)を見て、やはり相当酔っていると再認識する。

普段だったら絶対こんな笑顔を俺に向けないし、何よりこんなにベタベタしてこない。

あぁ、頑張れよ俺の理性!!

「馨さん、もっとぎゅってしてください。夫婦なんだからいいでしょ」

(ちか)さん? やっとその気になってくれたのは嬉しいけど、できればシラフの時に言ってほしいんですが」

「だから、酔ってないってば〜」

「これ以上はほんと勘弁して…俺の理性がぶっ飛びそうです…」

「ふふ、馨さん可愛いね」

可愛いのは(ちか)でしょうが!

「馨さん、さっきから顔真っ赤だけど熱でもあるんですか?」

「熱はないんだけどさぁ、(ちか)さん。これ以上はほんとにやめようね?」

「別にいいよ、馨さんなら…」

「あー、もうほんと覚悟しろよ」

俺のことこんなに煽ったのは(ちか)だからね?

後からやめてって泣いてもやめてあげられないからね?

俺も相当酔っ払ってたし、そこからはもう歯止めが効かなかった。

「か、おるさん…?」

「俺のこと煽ったのは(ちか)だろ? もう止めらんねぇから、覚悟しろよ」

若干の戸惑いを見せている(ちか)を抱き上げ、寝室へと連れて行く。

この歳にもなってこんなに余裕がないなんて、我ながら情けない。

「ベッドふかふかだね」

「それは良かった。(ちか)、嫌だったら俺のこと突き飛ばしていいから、その時は全力で突き飛ばせよ」

「ん…嫌じゃないよ…」

(ちか)のその言葉を合図に、俺は優しく唇を重ねた。

あぁ、こんなに柔らかくて温かい唇だったんだな。

謎の罪悪感に包まれながら、俺はキスを続けた。
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